不可思議な殺人(ミステリーアンソロジー)
祥伝社から出版されている『不可思議な殺人』を読みました。
9人のミステリー作家による短編集なのですが、これがまた各先生によって物語の綴り方の違いがはっきり分かる素敵な一品でした。
私の好みのお話は、小杉健治「遠い約束」と五十嵐均「愛の時効」です。直ぐにでも感想を語りたいのですが、ここは敢えて収録順に述べていきますね。
今回は、簡潔にあらすじと一言感想という形式にしようと思います。
1.西村京太郎「琵琶湖周遊殺人事件」
西村先生といえば、「十津川警部シリーズ」が有名ですよね。今も一途なファンの方からの人気が高い作家さんだと私は感じています。いつか手を出してみたいシリーズの1つとして私の欲しい本リストに載っています。
実は、この短編にも十津川警部は出演しています。
休日中にサイクリングを楽しんでいた田中刑事が狙撃手によって撃たれてしまった。その犯人は「必ず殺す」と警察署へ犯行声明をしたものの、決定的な殺害方法を取ろうとしない。
十津川警部は犯人の真の目的は別にあると睨み、大胆な推理で解決へ導いて行く。
物語は勿論面白かったのですが、この短編で印象深いのは作者の言葉の紡ぎ方です。
文章の紡ぎ方は同じテンポで進んでいく印象を抱きました。起承転結の起伏はありますが、文字列が四分音符のようなリズムなのです。
人によって違和感を抱く書き方かもしれないです。
2.津村秀介「背信の空路」
不倫関係を築いた男女2人が、旅客機をハイジャックして心中する計画を立てていた。予定決行の日、女は男との約束を破り、男の前から姿を消した。その後の行方は如何に。
最初、今井という登場人物の視点から始まります。手洗いにたった際に、ふと視界に写った男性が異様に気味の悪い雰囲気を纏っていることに不安を募らせていく様子がえがかれています。
そして、徐々に今井が目撃した男性の視点へと場面が変わり、何故旅客機にいるのか。目的は何か。固く結ばれた紐が解けていくように謎は解明されていきました。
3.小杉健治「遠い約束」
幼くして父を亡くし、母親と2人で暮らしてきた主人公の遙。ある時、母親の通帳に誰か知らない人から毎月お金が振り込まれていたことが明らかになった。母親は、将来良きパートナーと出会って結婚するときの費用にしようと手をつけてこなかったという。
恋人との縁談も進み、順調かと思われていた矢先、遙の父親が犯罪者であったという理由から破談となった。遙は父親の罪を払拭するべく、毎月お金を振り込んでいた見知らぬ誰かを真犯人と推測するが…。
私は、暗い気持ちを吹っ切って、前向きに進もうと気持ち新たにしていく強い女性が好みです。と言うよりも、憧れます。
実際は立ち直るにも人それぞれ時間がかかりますからね。シンドイ時は立ち止まって、歩けそうだと思ったらちょっと進んでみる。ぐらいがいいんですよね。
話が脱線しました…。読書感想へ戻します。
4.鳥羽亮「黒苗」
殺人を犯してしまった主人公。
誰も見ていない、見れない環境だったはず。
しかし、公衆の掲示板には自身の犯行を知っていると思しき人物がメモを残している。
どこで見られた? 気付かれた?
主人公に迫り来る焦りと恐怖がヒシヒシと読者にも伝わる一作でした。
主人公の心情に感化されてか、続きが気になる!と一切手を休めることなく勢いよく読み切った物語でした。
5.日下圭介「攫われた奴」
急遽大金が必要になってしまった主人公の亮司。
公園前を歩いていた時、虐められている児童を見つけ、保護する。懐いてしまった男の子は直ぐに家へ帰ろうとはせずに居座り続ける。
親が心配するだろうと思った亮司は、男の子の乗って来たであろう自転車に記載されている電話番号へ連絡する。保護している事を伝えようとしたものの、電話口の母親は亮司のことを誘拐犯と勘違いしてしまっているようであった。
ならば、勘違いを利用してやろう。
早合点してしまった亮司は、別の家庭に脅迫電話をかけてしまっていた。その事実に気づいたのは、身代金の受け渡しが完了して中身を確認し、脅迫した家庭へ再度連絡を取った後だった。
結末は非常にやるせない気持ちにさせられました。
ぜひ読んで下さい。
恐らく皆さんも私と同じ感想を抱くのではないかなと思います…。
6.中津文彦「裂けた脅迫」
街で偶然出会い、新しい愛人関係のターゲットを見つけた主人公。けれども、その女性は前上司の奥さんだった。
復讐心に火がついた主人公は、奥さんを脅迫する事で、前上司の家庭を崩壊させようと目論むが…。
人を呪わば穴二つ。
この一言につきます。
7.五十嵐均「愛の時効」
画廊の主人が亡くなった。
原因不明で、自殺とも他殺とも言える状況であった。
キーパーソンともいえる画廊の主人と親しい間柄であった千秋という女性。
警察からの質問も嘘偽りなくスラスラと答える。たとえ、危険薬物を主人へ手渡していたとしても。
千秋の協力もあり、早期解決するかと思われたが、次々と不明点が浮上する。
私は意外と真実は有耶無耶エンドが好みなのだと気づいてしまったお話でした。新しい扉を開いちゃいました…。
8.梓林太郎「右岸の林」
登山中の5人パーティーのもとに、1匹の茶色の犬が近づいてきた。何か伝えたいようでしきりに吠えてくる。5人は犬が進む方へついて行くと、そこには女性の遺体があった。
警察が現場へ到着し、捜査が進むと不可解な点が幾つも浮上する。金品を盗られていなかったり、女性の遺体の付近には男性の遺体もあったり…。
犯人と犯行目的は何であろうか。
結局、茶色の犬に関する真相は究明されていないんですよね…。モヤモヤしています。
実は、私が気づいていないだけで、真実は明るみにされているのかもしれません。(どなたか読まれたら教えてください)
「ジュウニヒトエの男」というメモ書きを握りしめ、女子大生が1人殺害された。
探偵キャサリンは、事件を解明するべく動き出す。
しかし、捜査の途中で別の女性の遺体を発見することになり…。
トリックが鮮やかで、伏線と回収までもスマートでありました。
なんといっても、キャサリンがチャーミングでキュート!
こんな女性に振り回されるなら、まあ、ありかもしれません。大変だとは思いますけどね。(えへへ)
★最後に書籍情報のおさらい
書籍名:不可思議な殺人
出版社:祥伝社
サイズ:文庫
ISBNコード:9784396327453
最後まで閲覧していただき、誠にありがとうございました!
また、次の書籍の感想記事でお会いしましょう。
読書感想ブログを始めます
はじめまして。
「Legere in spatium pace」と申します。
長たらしい名前ですが、ラテン語を使ってます。意味は『安らぎ空間での読書』です。
なので、”安らぎ読書”や”安読”など、ご自由にお呼び下さい。
自己紹介はさておき……。
何故、今になって読書感想をブログで?っと思われますよね。
色々と理由はありますが、一番は己の読書記録。
私自身、しょっちゅう本屋・古本屋へ立ち寄っては、直ぐに面白そうな本を見つけて買って帰るんです。
まだ読み終えていない本が何冊もあるのに…。
そうこうしてたら、積読が山のようになっていくのですね……。
そこで、山のように高く積み上がった本たちの読破記録としてブログに書き残そう!という算段です。
あわよくば、ブログを見てくださった皆様方と書籍情報のシェアが出来たらなぁ…なんて。
(あぁ、なんとおこがましい…!)
ただ、私生活のこともありますので、無理なく自分のペースでのんびり、ゆったり読書を楽しもうと思います。
更新頻度は不定期。
感想はネタバレを含む形になるかもしれません。もっと言えば、ブログ初心者なので感想文も全体構図も拙いでしょう。
それでもいいよという寛大な心をお持ちの方、これから当ブログとお付き合い下されば幸いです。どうぞよろしくお願いします。